便秘と健康

2017.09.14

年をとると便秘がちになるって本当?加齢に伴う便秘についてのお話です。

便秘というと「若い女性がなりやすい」というイメージを持っている方が多いかもしれません。しかし実は、60歳を超えると女性に限らず男性でも便秘を訴える方が多くなります。年をとって便秘になることを、加齢性便秘といいます。そこで今回は、なぜ年をとると便秘がちになるのか、その特徴などについてご紹介します。

■年をとると便秘になりやすいって本当?

厚生労働省が発行する「平成25年国民生活基礎調査の概況」によると、便秘の症状を訴える人の割合は、男女ともに年齢とともに増加しています。例えば、20代の男性で便秘がちだと答えた人は、1,000人に対してわずか8人。それに対して60代の男性では31人、70代では76人、80歳以上では129人です。また、女性の場合でも20代では41人なのに対して、60代では48人、70代では93人、80歳以上では116人となっています。

 

参照:厚生労働省 平成25年国民生活基礎調査の概況

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa13/dl/16.pdf

 

■年をとると なぜ便秘になりやすいの?

年をとると、なぜ便秘になりやすいのでしょうか。加齢に伴っておこる便秘は、大きく分けて2種類。ひとつは、「弛緩性便秘」、そしてもうひとつは「薬剤性便秘」です。それぞれの特徴を見ていきましょう。

 

◯加齢に伴う便秘①:弛緩性便秘

弛緩性便秘とは、腸の蠕動運動の低下に起因する便秘のことです。

年をとると弛緩性便秘になりやすい理由としてまず考えられるのは、「食事の量が若い頃よりも減る→腸の働き(腸の蠕動運動)が低下→便を押し出す力が弱くなる→便が腸内に滞留する」というサイクルの老化です。

年齢を重ねると、毎日の運動量が減ったり、歯が弱くなって咀嚼機能が衰えたり胃が弱ったりすることによって、若い頃よりも食事量が低下しがちです。その結果、便量が少なくなり、便意を催しにくくなります。同時に、加齢によって腸の働きや、排便時のいきみに必要な腹筋や肛門括約筋が弱まるため、便をうまく押し出せなくなってしまいます。すると、排出されなかった便は腸内に溜まって硬くなり、ますます排出しにくい状態に。このような悪循環によって、年配以降の年代では、便秘が慢性的になりがちです。

 

◯加齢に伴う便秘②:薬剤性便秘

薬剤性便秘とは、薬の副作用によって生じる便秘のこと。

年齢を重ねると、多くの人が若い頃より病気にかかることが多くなり、さまざまな薬を飲むようになります。そして、それらの薬のなかには、腸の働きを抑えたり腸管を収縮させたりする副作用を持つものも。例えば、パーキンソン病やうつ病の患者さんに投薬される抗コリン薬や、ガンの痛み止めとして使用されるオピオイド鎮痛薬(モルヒネ)、血液中の鉄分不足を補うための貧血剤、マイコプラズマ肺炎に処方されるマクロライド系抗生物質、高血圧の症状を和らげる降圧剤、風邪の際に処方されるリン酸コデインといった咳止めなど。このほかにも挙げればキリがないほど、薬剤には便秘の症状を引き起こさせるものがたくさんあります。

このほか、病気そのものの影響で便秘になることも。例えば、腸にポリープができたり炎症を起こしたりすることによって腸管が狭まると、正常な排便が困難になります。

 

■加齢性の便秘、放っておくのはダメ!

このように、年をとると便秘になりやすい要因がたくさんあります。しかし、便秘というのはなかなか深刻に受け止められにくいものです。「すっきり出なくて気持ちが悪いなあ」「3日便が出ないけど、そのうち出るだろう」などと、受け流してしまうことが多いのではないでしょうか。一過性の便秘も放置しておくと、食事や生活運動量の低下をもたらし、便秘が慢性化する原因になってしまいます。便秘が便秘を呼ぶ悪循環ですね。便秘が慢性化すると食事は喉をとらなくなるし、お腹は張って苦しいなど、QOL(生活の質)は低下し、身体にとっては大きな負担となります。特にお年寄りの場合には、腸の蠕動運動そのものが弱まっていることが多いため、食生活の改善、生活習慣の改善など、積極的な便秘対策を考えましょう。

 

■積極的な便秘対策とは?加齢性の便秘に下剤を使ってもいいの?

年配者~お年寄りの便秘には身体機能自体の低下やさまざまな服薬が原因なので、運動療法や食事療法に加え、市販されている便秘薬を上手に使って無理のない排便を促すことは、むしろ適切な対処方法といえます。

おすすめは身体に負担が掛かりにくい生薬/漢方系便秘薬の便秘薬です。漢方系は長く飲まないと効かないと思われがちですが、適切に選べば1回でもしっかり効きます。センナやダイオウ配合のものがあり、種類によって効き方が異なるのでドラッグストアーの薬剤師や登録販売者に相談にのってもらうといいでしょう。生薬/漢方系便秘薬のなかには、3歳児でもOKの身体に優しいタイプの製品もあるので、お年寄りの方でも安心して利用できます。

目指すのは、適度な力で無理なく”熟したバナナ便”が気持ち良く出せること。残便感がなく、排便後にすっきり感じることができればバッチリです。